これは基本の中の基本です。構えている時に相手のどこを見るか、自身の気持ちのコントロールはできているか、ということの他、そもそも正しく構えることができているのか、正しい構えとはどのようなものか、といったことを日頃から深く考えておく必要があると思います。

en garde (英語on guard)に関する資料を集めてみました。

FENCING A Short, Practical and Complete Exposition of the Art of Foil and Sabre by DR. Edward Breck / 1927

FENCING A Short, Practical and Complete Exposition of the Art of Foil and Sabre by DR. Edward Breck / 1927 American Sports Publishing Company New York

この本は1927年の出版のようです。7のところにありますが、左足に完全に体重を移動させて、とあります。後脚重心の教えのようですね。挿絵もそうなっているようです。このころのフェンシングデモンストレーション動画がありましたので、紹介します。

ON FENCING By Aldo Nadi / 1943

ON FENCING By Aldo Nadi / 1994 by Laureate Press. First published April 1943.

Aldo Nadi(1899-1965)の構えです。彼の著書の表紙の写真で、構えについては次のように書かれています。
フルーレ剣を持った手は相手に向け、もう一方は反対方向を指している。両方とも地面に並行で、フルーレの剣先から胸を横切り、左手の伸ばした指先まで一直線になっている。

次の写真は兄のNedo Nadi(1894-1940)です。この写真はWilliam M.Gauglerという人によるフェンシング用語辞典の表紙です。兄弟で構え方は同じですね。

A Dictionary of Universally Used Fencing Terminology by William M.Gaugler / 1997 Laureate Press

次は我がクラブのOB・千島不二雄先輩の構えです。先輩方は当時のヨーロッパの技術を正確に取りいれ、教えを忠実に守っていたような気がします(例えば上記Aldo Nadiの著書の出版は1943・構えがほぼ同じ)。これら3者の構えは、後に記載するIstván Lukovichが書いているところの、電気審判器導入前の特徴が良く出ていると思います。

昭和28(1953)年卒 千島不二雄先輩

昭和43(1968)年卒 藤田博先輩の”藤田ノート”に、当時の構えの図解説明がありました。

左部分:藤田ノート(昭和42年当時のもの)の1ページ、右はそれをデジタル化したもの(一部不明な部分は確認中)。

ELECTRIC FOIL FENCING By István Lukovich / 1971

ELECTRIC FOIL FENCING By István Lukovich / 1971 Corvina Publ., Butapesut / 山本耕司監修 川名宏美訳

日本語訳版のタイトルは「電気フルーレによる最新フェンシング技術」。かれこれ50年前の書籍で、タイトルにあるように電気審判器の導入の前後で様々な事が変わり、その後の「最新の」技術書になります。構えについても7ページにわたって書かれています。要約をしてみましょう。

電気審判器導入前と後の違い
導入前導入後
外側に強く張った膝、広いスタンス、正確に定義されたこまかな動作を伴った、全体的により教則通りのポジション、非常に低い構え。より自然なポジションで、より遠いディスタンスと、より迅速に動くフェンシングの必要性。身体各部についての細かな位置づけはされていない。
最大の動作はマルシェ・クー・ドロワかバレストラ。遠いディスタンスからでも速いスタートを切り、一連のステップ動作を続けてターゲットに向かってスムーズに加速。
バランスのとれた、調和的で理想的な外見。見たところ感銘をうけることはないが、因習から離れ、スムーズでバランスのとれたものにする時、非常に重要で有益。
※電気審判器導入前のフェンシングの特徴は、先の動画で確認しましょう。
構えのポイント
  • フェンサーのバランスを確保するのに十分なほど安定しているべきで、同時に、迅速に動けるように流動的でなければならない。
  • 前触れなしに一定の方向に素早く動けなければいけない
  • スタンスは、後足のかかとと前足のつま先とを結ぶ直線上(フェンシング・ライン上)にあること。
  • 2つの足の間隔は、1足長から1足長半が一般的で最大2足長。最も良いスタンスを決めるのは、フェンサー個々の解剖学的構造による。対戦における多くの要因によっても変える必要が出てくる。
  • 動作を支配し、動作によって変化する。常にその自然な性質を保持しなければならないが、相手に意図するところの兆候を見せてはならない。
  • 足によって形づくられる角度は90度を超えてはいけない。
  • 両足で大きく角度をつけるよりも、小さい角度にする方が動きやすい。前足は常に相手の方向に向けなければならない。
  • 安定するために、足を広く離して低い構えをしようとフェンサーは一般的に考える。足をせばめて、高い重心をもった構えは、一般に素早く動くことを意図している。構えの広さや深さ、またそれらの比率はしばしばスタイルを特色づける(攻撃型か防御型か)。
  • スタンスの中心に重心をもってくるのは賢明なことである。負担が両足に公平に振り分けられるから。
  • 動いている間、重心は位置を変え、フットワークに従って、前後に動く。重心の変化が、スタンスに影響を与える。
  • 初心者のうちはバランスのとれたスタンスの保持が難しく、熟練したフェンサーは、重心がどのように変化しても、スタンスはほとんど変わらない。
  • 上体は自然に楽に構える。両足の上に「据える」。背中をそらさず、上体は垂直にするよりもむしろほんの少し前傾させるとよい。
  • 腰は一杯に開くよりも少し閉じぎみにする(狭いスタンスと膝のより自然なポジションの結果)。
  • 剣を持たない手を適切に上げる場合、腕を無理に後方に張る必要はない。身体の堅い選手がひじを充分に持ち上げ、手を身体から遠く離すことは賢明ではない。
  • 上腕は水平になるようにして、ひじが水平線より少し下にある方がよい。前腕は垂直であるのが自然。
  • 剣を持たない方の肩に力を入れずリラックスして、腕の平面上にいれてしまうことは非常に重要である。
  • 顔は自然な状態で相手に向けられなければならない。
  • 剣を持つ方の腕のポジションは2種類。1つは伝統的な持ち方(図17)、もう1つは下方に向けた構えで、電気フルーレ導入以来ポピュラーになった(図18)。
  • 剣を持つ腕のひじは内側にあるべきだし、ポアンは少し内に入った方がよい。剣が相手の1点に集中して向いているようにした構え方。

Fencing and the Master by László Szabó / 1977

この本は、フェンシングの指導者向けの本です。”構え”については、「ポジションの技術的な説明と指導」という節で、いくつかのポジションを取る時の指導のポイントが書かれています。指導者がある技術について指導する場合に、生徒がどのように感じているか、とか、生徒のレベルに応じて、どういった点に気を付けるのかなど、指導者として読んでも、生徒として読んでもためになる本だと思います。



いかがでしょう?過去の動作も何かの役に立つかもしれません。自身のスタイルの参考にしてみてください。